鎌倉市鶴岡八幡宮の参道、段葛の入口右手にある「診療所をもつ住宅」。
5階建のマンションになることが、4月25日に設置された標識により告知されました。近日5月21日に解体工事がスタートするそうです。現存の建物は相当老朽化しているものの、モダニズムの住宅・診療所として、歴史的にも貴重なものであろうと、保存に向けて調査を行おうという動きも聞いていたところでした。
景観や文化遺産についてよりよい選択を、皆様と共に考えていただくことをお願い申し上げます。
関心のある方に認知・検討いただく期間が短すぎるのですが、できるだけ穏やかな形で進むことを望んでいます。お知恵、お力をお貸しいただけませんでしょうか。
Facebookやメールでいただいた意見
- change.orgで署名活動されてはいかがでしょうか?
- 市と協議して、建築関係の景観や建築協議関係の条例の見直しを働き掛ける機会ではないか。
- 違和感と不安。社会、環境、歴史、住民感情、物語、多くの背景において思慮すべきでは。
- 五十年、百年を考えるべき話ではないでしょうか。
Ⅰ. 計画の土地・建物について
かつての段葛の面影をのこす緑多い庭は、今もオアシスのようです。若宮大路周辺のビル計画は、これまでも高さ規制を鎌倉市が指導し、住民も協定を結び、時に反対運動も行われ、4階建を3階に変更するなど、先人たちができる限りの若宮大路の景観を守るための努力を行ってきた歴史的経緯があります。最初に拝見した基本計画図面では、素人目にも土地性、歴史的背景を全く考慮したものでないことに、市民は大きな不安を感じています。企業として、地域社会や歴史と向きあう姿勢についてしっかりと検証いただきたく思います。
地域住民との対話の場が必要ではないでしょうか。
Facebookやメールでいただいた意見
- 仮にマンションになるとしても、5階建てはそのまま許可できるか、市も検討課題としなければいけないでしょう。
- 国・県・市・議会・住民・市民団体など、多くに知っていただくべきです。
- 犬猫の峰病院…何時も前を通ると視野に入ってきます。初めて知りました。
- 建物も桜の木も段葛の景色の一つですよね。なんとか良い方法が見つかりますように!
- 市役所にお願いする話ではなく、市民が市民の力で解決しなければいけない話です。こういう話が増えていく予感がいたします。鎌倉のまちをどうしたいかという話として。
- 知らなかった。気になっていましたが。
- 市民が行動を起こすことが大切かも知れません。
- もう図面とか出てるから無理なのかなあって思っていました。できることはありますか。
- 建物そのものの価値だけでなく、少し小高くなった車寄せや桜の木の風情、丸ごとがなくなるのは残念です。
- この立地に、敷地いっぱいによくある見た目のマンションが建つこと、それを建てることの景観への配慮がないのは、本質的に都市デベロッパーとしての見識がない、と言いたいですね。逆に、地元との協働や景観への配慮・貢献(桜の古木を残すことにこだわるとか)など、新しいパラダイムの物件を建てれば、企業ブランドも上がるし、いろんな地域で招かれるデベロッパーになれるのに、と思います。
- 専門的なことはわからないけど、まずはどんな風にしたいのかを知りたいです。
- 「2千平米以下の場合は条例に基づく説明会は不要」とのことで、住民側から声をあげるしかないようですね。
- 「既存環境や建物への価値」についての検証・検討が必要ではないですか。
- 建屋(点)ごとだけではなく、このエリア(面)全体の将来像を考えるべきでは。
- 景観重要建造物?だった高野邸(古我邸の近く)ですら最近更地になりました。峰さんのところは奥が広いので手前の若宮大路側からの景観に配慮する余地はありそう。だが、やめさせることはできない。景観条例を見直すこともできていない。現状を維持したい気持ちはわかるが、若宮大路自体が現在の姿になったのは明治以降ですから。いつの状態を保存するのか。(峰さんのところだと、入り口にある桜の木が残念だなとは思う。)
Ⅱ. 現存の建物について
この建物は、現在の世界のデザインの概念を築き上げたドイツのデザイン・芸術学校「バウハウス」で学ばれた数少ない日本人(水谷武彦、山脇巌、山脇道子、大野玉枝)の一人、山脇巌の設計「診療所をもつ住宅(1934)」です。近年は犬猫病院として使われていました。山脇巌設計の建物がどれくらい現存しているのかは不明ですが、建ってから長い年月を経ているので、それほど多くないことが推察されます。
移築保存の道が考えられないでしょうか。
Facebookやメールでいただいた意見
- 峰医院は、私が小5で鎌倉市に引っ越した時に素敵な家だなと思った建物でした。ずっとそのまま在って空気のような存在になっていました。まずは調査をするのが先決でしょう。
- 市と協働で事業者から買い取ることはできないでしょうか。
- 移築修復保存、そして活用する方向に運べないかと思います。
- マンションの建設に反対したいわけではないので、いちばん良い方法は「移築」ではないかと思いました。
- 保存・活用に向けて良い案・方法を見つけられたらと思います。
- 解体するのであれば、無償で譲り受けることはできませんか。
- 獣医師だった峰先生は鎌倉ロータリークラブの重鎮でした。鎌倉YMCAの車イスの会設立には大変な尽力をされた方です。仏教寺院も含め、峰先生の関わったボランティア団体は鎌倉に多数存在しております。応援してくれるのでは。
- 歴史的価値や財産であることを証明するには時間がないですね。そもそもそれを客観的に判断できるでしょうか。安全性の問題もあって、近代建築は全てそこで取り壊しになってるのが現実。
参考サイト
山脇 巌(wikipedia)
バウハウス (wikipedia)
山脇巌に関する研究(日本大学生産工学部)(PDF)
山脇巌に関する基礎研究(日本大学生産工学部)(PDF)
山脇巌設計 国の登録有形文化財「三岸アトリエ」。バウハウスの流れを汲む戦前の木造モダニズム建築を守り続ける(LIFULL HOME'S PRESS)
Ⅲ. 近代建築の保存について
鎌倉の歴史的建造物の悉皆(しっかい)調査は、県の全県近代洋風調査 (1984年)、全県近代和風調査(2000年)しかありません。ボランテイアで平成13年から平成15年にかけて行われた全市の近世近代歴史的建造物の存在確認調査では1400棟を超える建物の存在が確認できました。勿論玉石混淆ですが、県の調査した計400棟より遥かに多い建物が残っていたことになります。隣接の横浜市では、全市の悉皆調査を1985年に行い、ランク付けをして登録有形文化財の制定前から市独自の制度で保全活用を図ってきました。鎌倉市としてこういうデータを活かして政策を構築するという考えがないことも、今回のような問題を発生させている要因となっています。
歴史まちづくりを推進する日本遺産の鎌倉としても、市・市民協働による取り組みが必要ではないでしょうか。
Facebookやメールでいただいた意見
- 歴史と文化に溢れた魅力的なまちであってほしいと願っております。
- バウハウスはとても好きです。ワルターグロピウスの学校や住宅が好きです。勿体無いと思います。何か出来ればと思い、シェアさせていたきます。
- 近代美術館が建物だけでも残せたのは、鎌倉の建築家の皆さんの要望がありました。
- まずは、できるだけ多くの方々にこの建物のこと、この建物の持つ意味を知ってもらいたいと思います。
- どうしても保存できない時もある。解体前に、たくさんの人に見に来てもらったり、あるいは、それを作品にしたいという写真家に撮影してもらったり、積極的に映画のロケを誘致したり。
- その姿を別の媒体で残す試みをしても良いと思うのです。そして、解体前には、建物に大きなリボンを結んで、『今までありがとう、さようなら』セレモニーをしたり…。
- この建物 鎌倉行く度に気になってました。ただ使われてなかったようなのでどうなるのかと思ってましたが…物語や感情を感じることの出来る建物はとても貴重ですよね。何とか保存して欲しいものです。
- 見直す動きや手法を、お金を産むスキームを整理しないと厳しい。
ご意見ご感想はFacebookで承ります。是非申請くださいますようお願い申し上げます。
Facebookグループ「犬猫の峰病院」
発起人 野村和代(鎌倉市民)、金山眞人(建築家・ヘリテージマネージャー)、二藤部知哉(鎌倉市民)